詩集 そよ風のなかの念仏 (著:中川 静村  刊行:百華苑) より



むこうがわ

わすれ とおしの
こちらを
おぼえ とおしの
むこう

おがんだ おぼえのない
こちらを
おがみ ぬいている
むこう

こちらの
かるい かたのに は
むこうの
なみだの おもいしょうこ

こぼれる ぐちは
こちらのもの
かえられた ねんぶつは
むこうのもの

こちらに 
ゆだんが あろうとも
むこうに
ちりほどの ゆだんもない

なにもかも
むこうが しあげて
なにもかも
いただく こちら

やるせないのは
むこうがわ
やせて つらいは
むこうがわ
ただ せつないのは
むこうがわ

たのんで いるのは
むこうがわ
つかんで いるのは
むこうがわ
すてられ ないのは 
むこうがわ


やっと しあげて いただいた
となえる だけの おねんぶつ
あわせる だけの この りょうて


はる三月の
ひだまりの
ツクシの ような
こちらがわ



全 部

あと さき なし

うえ した なし

よこ はば なし


 たって いる
 ここん とこが
 ここん とこ
 一てん が

お六字 の
全部なり



生きる(ある仏婦大会の 合唱歌として)

生かされて 生きてきた
生かされて 生きている
生かされて 生きてゆこうと
手を合わす 南無阿弥陀仏


このままの わがいのち
このままの わがこころ
このままに たのみまいらせ
ひたすらに 生きなん今日も


あなかしこ みほとけと
あなかしこ このわれと
むすばれし このとうとさに
涙ぐむ  南無阿弥陀仏

詩集 そよ風のなかの念仏 百華苑 刊

著者:中川 静村(なかがわ せいそん)
発行:百華苑
   京都市下京区油小路通花屋町上ル
   TEL 075−371−5760